古川日出男 / LOVE

 LOVE
愛がサルは考える」 文法上、明らかにおかしな言葉使いだけど、この話を読み解くにあたって、あまりにも示唆的な一言。文脈や、文法や、その他のすべてを差し置いて優先されるラブ。東京は目黒区近辺を舞台に、20人程の登場人物たちの、絡み合ったり、すれ違ったりするそれぞれのライフ。僕は昔からどうしてか、小説や映画を問わず、群像劇というものが好きでしかたないのだけど、この話はその中でもかなり上位に位置するような印象を受けた。僕の心のベストワン映画『マグノリア』を初めて観たときと同じような気分で読み進めていた。どちらも明確な救いがあるわけではないのに、多幸感に包まれて、エンディングを迎えるのがもったいないような、そんな気分。それがつまるところの愛なのか。だからこの本のタイトルはLOVEなのか。