メゾン・ド・ヒミコ

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新宿にて。どうも人気のある映画のようで、えらい大盛況だった。一週間のうちに映画館に二度も足を運ぶなんていったい何年ぶりか。たまにはこういうのもいいけど。
映画のプロットはシンプル。全体としては良い映画には間違いないものの、脚本が冗長な割には人物描写が浅いように思えたり、演出が垢抜けないように思えたりと、どこかもう一息な印象を受けた。設定を目にしたときに、こういう話かな?と想像していたほぼそのままに物語が進んだので、やや拍子抜けした感もある。
それでもいくつか良い場面もあった。特にダンスホールで"また逢う日まで"が流れ始めた瞬間。太めの彼が差し出したあの手。あのシーンだけでこの映画はもういいような気がする。日本橋ヨヲコの「G戦場ヘブンズドア」のことを思い出した。
それと、柴咲コウが勤めている塗装会社の場面はほとんどが良かった。もっと限定するならば、会社の専務が出てくる場面。良心の呵責を持たず(あるいは一切人にそのようなものを見せず)、ただ淡々と目の前のものを手に入れていく存在。僕も何人か知ってるけど、現実でもああいう人間は強い。出会ってしまったら避けることか飲み込まれることしかできない、そんな人物を第三者的に眺めることができるというのも、この映画の貴重なところだと思う。