コーヒー&シガレッツ

なんとも形容しがたい映画だった。ジャームッシュが織りなす11編の小品。すべての登場人物がコーヒーを飲み、ほとんどの登場人物が合間に煙草を吸い、明日もまた会うような友人と、あるいはもう二度と会うことがなさそうな相手と、どこにでもありそうな、他のどこにもなさそうな、噛み合わない会話を繰り広げる。ただの会話を延々と映しているだけなのに、しっかりと面白い映画として成り立っているのが不思議。
しかし、イギー・ポップトム・ウェイツが並んでいる絵面の強烈さにくらくらしたり、GZAとRZAの軽快な掛け合いに笑ったりと忙しかったけど、なんといってもラストの二人の老人の会話に鷲掴みされた。正確な台詞は思い出せないものの、大意では「コーヒーをシャンパンだと思って、人生を祝福しよう」とどちらかが言っていたはず。どうしたって毎日当たり前のように飲んでいるものを、人生を祝福するためのものとして捉えるだなんて!他の話も面白かったけど、そのアイディアだけでも観たかいがあった。


そういえばこんな映画なので、観ている間ずっと、コーヒーと煙草が欲しくて仕方なかった。できることならもう一度、たっぷりめのコーヒーとゴロワーズを傍らに準備してから眺め直したい。そのためならDVDを買ってもいい。