古川日出男 / 中国行きのスロウ・ボートRMX

 中国行きのスロウ・ボートRMX (ダ・ヴィンチ・ブックス)
2年ほど前に、「村上春樹の名作を、若手作家がトリビュート」と銘打たれて刊行されたうちの一冊。これまで手に取ってみたこともなく、いったいなんなんだろう?と思っていたのですが、読んでみると、もうこれは立派なリミックス。本の世界でもリミックスって有効なんですね。主題と構成だけを残して、物語は全面的に差し替える。村上版は3人の中国人との出会いにおける、他者との果たされなかった接続を基に物語が進行するのに対して、この古川版は、3人のガールフレンドとの別れに際しての、叶わなかったエクソダスを基に物語が進行。"叶わなかったエクソダス"という再設定だけで、充分すぎるぐらい魅力的。
僕はこれを喫茶店で読みはじめたのですが、読み終えるまで席を立てませんでした。こうまで鮮やかに過去の名作がリミックスされているなら、他のものも読んでみようか。もっと欲を言えば、『4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』で誰か書いてもらえないだろうか。