読書紀行

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア) Fine days―恋愛小説 目覚めよと人魚は歌う (新潮文庫) 溺れる魚 (新潮文庫) チョーク! (Hayakawa novels)
まとまった読書時間が確保できたので、読んだことがなかった作家のものをいくつか読んでみた。ライトなタッチのものばかりなので、どの本も2時間ばかりで読めるんじゃないだろうか。以下短評。

過去と現在の2つの物語が交差しながら進む。人物描写が薄すぎるように思えるけど、終盤で明かされる物語上の大きな仕掛けを際立たせるものだとしたらそれも納得がいく。張り巡らされた伏線が綺麗さっぱりと回収されていく様が見事なものだった。

恋を題材とした4つの短編。どの話もセンチメントに引き摺られすぎる傾向があるせいか、いまひとつ物語に入り込むことができなかった。ただ、どの話も構成がよくできているので、読書慣れしていない人が手始めに読むにはよさそう。

今回いちばんの驚き。この作家の本は今後ともしっかりチェックしなくては。舞台は一軒の家とその周辺から動かないのに、どこか旅物語のような趣きすら感じさせる。それぞれの事情を抱えた五人の濃密な数日間。はじめの数ページで投げ出さなくて良かった。

映画にしたら面白そうな話だな、と思いながら読んでいたら、どうやらとっくに映画化されているようで。知らなかった。しかも監督が堤幸彦だなんてぴったりの組み合わせじゃないか。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のように仕上がっているのだろうか。

以前から気になっていたチャック・パラニューク。『ファイト・クラブ』からスタートしようと思っていたのだけど、この装丁にやられて予定変更。こういうパラノイア的な小説は嫌いじゃない。"すべての依存症は(中略)同じ問題を手当てする手段にすぎない。麻薬であれ過食であれアルコールであれセックスであれ、それは平静を得るためのひとつの手段にすぎない。私たちが知っていることから逃れるための。教育から。林檎の一かじりから(p.159より)"という一段落に打ちのめされた。